Lesson10 ストロークという名の魔法

講義
1 ストロークとは?
母親が赤ちゃんに対して行う「ストローク(愛撫)」は、子供の成長に大きく影響を与えるという。可愛がられて育った(プラスのストロークを多く受けた)子供は、能力的に高く、性格的にも良い子になり、逆にあまり愛情を受けなかった(ストロークを受けなかった、またはマイナスのストロークを多く受けた)子供は、能力・性格面で劣ってしまうという。プラスのストロークは、スキンシップだけではなく、褒められる・微笑まれる・大切にされる・肯定される・愛される等のことばや行為も含まれる。マイナスの場合も同様で、身体的な虐待だけでなく、けなす・怒られる・否定される・無視されるというようなものも入る。人間はストロークを欲する。ちなみに、おねしょはストロークが足らないことに不満を持つ子供が、マイナスのストロークでも構わないからストロークを欲する気持ちが起こす現象だと言われる。

そして、プラスのストロークを欲するのは、大人になっても同じだ。好かれたいし、大切にされたいし、自分の存在の価値を認めてもらいたいのだ。人間関係を良くするためというと、自分がいかに優れている人間になるか、といかに他人に好かれるか、ということばかり考えがちなのだが、実はそうではない。良好な人間関係をつくるために、多くの人は、優れた、魅力的な人間になろうとする。でもそれは、なかなか大変な努力と時間が必要。もっと簡単にしかも絶大な効果を生むやり方がある。まるで魔法のように。。。それがストロークである。


2 ストロークの実例
プラス
マイナス
賞賛
・素晴らしいですね。
・良いですね。
・さすがですね。
・けなす
・批判
・無視
肯定
・おっしゃる通りです。
・全く同意見です。
・反対
・否定
好意
・お会いするのが楽しみです。
・○○さんのファンです。
・○○さんのお話大好きなんですよ。
・批判
・攻撃
尊重
・謙譲する。
・意向を尊重する。
・下手にでる。
・無視
・軽視
存在価値
・○○さんのお陰です。
・大変助かりました。
・大切な方ですから。
・相談する。指導を請う。
・無視
・軽視


3 ストロークバンク(プラスもマイナスもスパイラルで増大)
自分の心の中にプラスのストロークがたまっていれば、他人に対してもプラスのストロークを発することができる。逆にマイナスがたまっていると、他人に対してもマイナスを発し易くなる。この法則を「ストロークバンク」という。また、自分にプラスのストロークを与えてくれる人には、プラスのストロークを与えたくなる。逆も然り。

このような法則から、ストロークはプラスがプラスを、マイナスがマイナスを生みだし、それはくるくると回ってスパイラルで増大するという性質をもっている。いわゆる「寂しい人(困った人)」は、人の気をひこうと奇異な行動をとったり、気を引くためにいじわるをしたりする。大人版のおねしょだ。そういうマイナスのストロークを受けた人は、お返しに「寂しい人」に対してマイナスのストロークを返す。そうすると「寂しい人」は、さらに寂しくなり、またまたマイナスのストロークを投げてしまう。それに対して周囲の人はさらに強烈なマイナスのストロークを返す。「寂しい人」は、愛が欲しい、自分を構って欲しいという気持ちを持っているにも関わらず、その本心に反して人間関係は、益々悪化していく。無限地獄となる。逆にプラスのストロークを他人に与える人は、人からもプラスをもらえる。そしてスパイラル状に、信頼や愛情が築かれていく。

つまり、最初に自分の方から発するのがプラスかマイナスかによって、その後の人間関係が大きく変わるのだ。まずプラスのストロークを出そう!


4 ストロークリザーブ(人間関係の貯金と負債)
ストロークには、もう一つ重要な法則がある。普段から相手にプラスのストロークを出していて、相手の心にプラスが貯まっていると、少々失敗をしても許してもらえる。逆にマイナスを貯めていると、大したことのない失敗でも、まるで鬼の首をとったかのように責め立てられる。この法則をストロークリザーブという。例えば、普段から好かれている人とのアポイントメントに遅刻したとしても、笑って許してもらえる。同じ失敗を、憎たらしく思われている人がやると、ここぞとばかり攻撃される。これが人の情なのだ。

世の中すべて理屈で動いていると思っている人には、これが理解できない。理解できないから、自分が正しいと思う方向に世の中の人間が動かないと「世の中間違っている」と嘆く。そして自分の正しさを証明しようとして、議論を挑む。人の間違いを指摘しようとする。悲しいかな、問題の所在が違うのだ。人を否定することによって自分の正しさを証明しようとすればするほど、世間はますます自分から離れていく。人間関係は破滅する。世の中で生きていくのは、なんと難しいものかと絶望する。実は難しくもなんともない。それどころか、非常に簡単なのだ。マイナスのストロークを投げるから、マイナスのストロークが返ってくる。単純にそれだけの話だ。

逆にプラスのストロークを人に与えて、好意を受けたり寛大にしてもらったりしている人は、周りの人間に恵まれていると思っているケースが多い。実は自分がそうしていることに気づかず、周りに感謝しているくらいだから、それがまたプラスのストロークを増産する。


5 プラスのストロークを出そう
賢明な皆さんはすでに「ストロークという名の魔法」のいう題名の意味がわかったことだろう。プラスのストロークを出そう。それは自分自身にかならず返って来る。また、貴方自身の人間関係だけのためではない。会社の顔となる貴方が出すストロークは、会社自身が世間に発するストロークとなる。貴方がお客さんや取引先に発するプラスのストロークは、会社にとっての財産となる。立派な仕事なのだ。



練習しよう
身の回りの人(家族、同僚、上司、部下、友達、恋人など)に、プラスのストロークをたくさんあげてみよう。その結果、その人の明るさや元気さにどのような影響を与えるか、自分に対する態度や言動がどう変化するかを観察してみよう。